氷点下。での話。

まだ時代は始まっていない。
もう時代は始まっている。


もう時代は始まっていない。
まだ時代は始まっている。


ドウデモイイ氏はまばたきもせず、ソンナコトナイ氏はあくびをしたりしなかったり。
決して融けない氷の下で、人々は生活していた。
そこでは毎日殺人が起こり、それでも金と愛と欲望で、巨大な生命スパイラルは回っていた。


「ここはもう百年ともたないらしい」
「は?」
「だから。俺たちはここでいつまでも生きてられないってことだ」
「だから?」
「だから。この先どうするかって話だよ」
「なんで」
「なんでって・・・ああ、今年も寒いな」


そんな会話が、もう何千年と繰り返されていた。


ウチュウノハテノ星で、長旅を終えた小鳥たちは会話していた。
「人がいっぱい死んでいたよ」
「どこもかしこも血の臭いでいっぱいだった」
「そして氷の臭い」
「そして氷の臭い!」




それでも。それでも私は。それでも私はいつまでも。薄く強固な氷に透かして宇宙の破片を見ている少女に恋している。
血と肉でできた透明人間のような君に透かして、宇宙の破片を探している。