廃墟のようなビルの階段、踊り場にいる。知らない男二人と一緒にいる。 一人はどうやら死にたいらしい。もう一人の男とあたしは必死に彼を説得している。男が手摺りから身を乗り出しているのをあたしは必死で掴んで引き戻そうとしている。 「ね、ほらちょっ…

崖の上を走っている。空は鈍色で、パステルカラーの雲が流れる。 海にはイルカが走っている。こっちに走ってくる。 猛スピードで駆け抜けた先で、イルカとぶつかる。 「来るよ。来るよ」 とイルカが言う。あたしの肩に頭を擦りつけながら、震える声で言う。…

たまこ「もしもーし」 うめこ「はい、こちら南警察署」 たまこ「・・・うめちゃん、よく分からん」 うめこ「何よ？今忙しいんだけど」 たまこ「何でもないんだけどさ。何してんの？」 うめこ「物色」 たまこ「買い物？何買うの？」 うめこ「特に何も。あ、こ…

製作年:1967年 製作国:アメリカ 配給:ワーナーブラザーズ 監督:アーサー・ペン 出演:ウォーレン・ビーティ､フェイ・ダナウェイ コーラを飲む二人はB＆C。 「銃、持ってるの？・・・見せてよ」 「・・・」 「・・・どうせ撃てっこないわ」 コーラが口の端から…

また同じ夢を見ていた。そしてまた完結しない。 ベッドから身体を起こし、男は時計を見る。17-1122-3.77だ。 あと0.13ﾀﾙｸしたら部屋を出よう。どうせ時間なんて関係ない仕事なのだ。 男は窓を開け、煙草に火を点ける。窓から見えるジェニーはすでに夜の顔を…

千果子の家は古い木造家屋で、入り組んだ路地の先にある。私は迷路のようなこの道を初めて車で走った。懐かしく、でも知らない道のようだった。 途中、千果子の父親が別棟の車庫で軽トラックに縄のようなものを積んでいるのを見かけた。彼女の家は兼業農家で…

頭の中に入り込んできた。ハインツ。その時何をしていたのかというと。 一服して、眠くなって、風呂にも入らなきゃいけないなぁ、明日は何着て行こうかなぁと思いながらベッドに寝転んで、けだるいまどろみの中、 「自己憐憫という名の自己嫌悪。それとも自…

会社の七階非常階段は僕の休憩所だ。独りになりたくなるといつもここで一服する。空が見えるし、何より車や人の音がしないのだ。聞こえてくるのは工場の規則的なガチャンガチャンという音だけ。生活の音は機械音に吸い込まれてしまう。 それは心地良い混沌で…

大学に入って初めてのバイト先に、素敵な女の子がいた。あたしはその子が好きだった。 目の周りは真っ黒いアイライン。髪はエクステで背中半分が隠れるくらいあった(彼女はそれを「ヅラ」と呼んでいた)。そして健康的な太り方をしていた。 あたしは彼女より…

たまこ「マハリークマハーリタ♪」 うめこ「ヤンバラヤンヤンヤン♪」 たまこ「・・・どうしたの気持ち悪い」 うめこ「別に。たまにはノッてあげようかと思って」 たまこ「あ、ありがと」 うめこ「そういえばサリーちゃんってなんで人間界に来たの？」 たまこ…

「結婚するんだ。あたし」 突然の報告だった。生ぬるい風が一瞬固まり、そして流れていった。 私たちは海岸沿いを走っていた。 その日私は早めに風呂に入り、午後六時には部屋着で夕食の準備をしていた。実家からもらってきたそうめんを食べるつもりだった。…

製作年:1967年 製作国:日本 配給:日活 監督:森永健次郎 出演:和泉雅子､杉良太郎 モダンガールは恋を知らない。 モダンガールは土手を転がってはしゃぐ。 モダンガールは実の父親を知らない。 モダンガールはトマトをかじる。 モダンガールは裸で海を泳ぐ。 …

昔々、あるところにりんご太郎という若者がおりました。 りんご太郎は肉食で、好物は牛タンでした。 ではなぜりんご太郎という名前なのか。それはりんご太郎の母親が草食で、りんごが大好きだったからです。りんご太郎は自分の名前と内面のギャップに悩んだ…

ダッシュボードの照明に酔いながら運転している。あたしは頭の中で自分史を垂れ流す。あたしが今までやってきた良い事、悪い事。あたしが今まで出会った人。別れた人。楽しかった事。辛かった事。 走馬灯のようだった。あたしは死ぬのかしら？走馬灯がぐるぐ…

デカダンスに飽きたので、もっと自由にやろうと思って『コットン・ラボ』に改名しました。 意味の無いタイトル。だから自由になれると思います。 アッパーもダウナーも。ヒッピーもヤッピーも。好きも嫌いも。 個人的にデカダンスは一旦通り過ぎたかな。そう…