『ニシムクサムライ、ヒガシムクアタシ。』no.4

 ダッシュボードの照明に酔いながら運転している。あたしは頭の中で自分史を垂れ流す。あたしが今までやってきた良い事、悪い事。あたしが今まで出会った人。別れた人。楽しかった事。辛かった事。

 走馬灯のようだった。あたしは死ぬのかしら?走馬灯がぐるぐる回って、あたしはそれに巻き込まれていく。

 お母さんが微笑んで、腕に抱いたあたしを見ていた。お父さんがおもちゃを片付けないあたしに怒って一番大事にしていた人形をゴミ箱に捨てた。鉄棒で後ろ回りが出来た。友達と鬼ごっこして遊んだ。つまらないことで喧嘩した。好きな男の子はあたしに冷たかった。部活で泣いた。彼の部活が終わるまで教室で待ってた。手を繋いだ感触。二人の距離感。「好きだよ」の響き。ついた嘘。つかれた嘘。朝に見た彼の空っぽの目。それでもあたしの心臓はずっと動いていたんだった。

 眩暈がして、あたしは車を停めた。とりあえずコンビニで地図とエビアンを買う。欲しいのは冷たい水と地図だった。それだけあれば他には何も要らないと思った。車に戻って地図を見ながらとりあえずの目的地を探す。何が見たいかといえば海が見たかった。そこで太平洋を見に行くことにした。日本海じゃない海。それはどこにでも続いているような気がした。

 500mlの水を全部飲み干して、あたしはエンジンをかけた。

to be continued...