ヌードモデル

鏡の中の自分を見て、あなたは溜息を漏らす。なんて醜い形なんだ。と。
堅いものと柔らかいものを薄い皮で包んだ、奇妙な凹凸のある長方形の四隅からは同じように得体の知れないものでできたグロテスクな突起がひょろひょろと伸びて、先割れしている。あなたの身体はところどころ穴が開いていたり、凹んでいたり、目玉がなんの前触れも無く埋め込んであったり、そしていろいろなところに毛が生えているのだ。
なんて恐ろしい形。自分は異形なんだ。と思う。
反射的に右手を突き出し鏡を割ったら、血が出る。あなたの脆い身体は裂け、鋭く光るガラスの破片が突き刺さる。
スマートな鏡。それに対して不安定なあなたの身体。


いいと思うよ。それで。うん。そういうのを求めているんだ。僕はね。


あなたの不気味な身体はヴィーナスになる。「僕」によると、「神だって、異形」らしい。
あなたはなんだかがっかりする。


無様で美しい世界を描きたいんだ。


「僕」はあなたの身体を包帯でぐるぐる巻きにしてしまう。描かれたのはミイラのようなヴィーナス。