三文詩

久しぶりにハイヒールを履くと、足がマメだらけになって、痛くて痛くてとにかく庇いながらの変な歩き方をしていると、足首まで変に凝ってきてあまりに辛いので、靴はもう脱いで、トイレに行った靴でいろんな人が歩いた道を、酔っ払ったおっちゃんがゲロ吐いた道を、転がってたナイフを拾おうとして誤ってグサッと手を切った人の血が染み込んだ道を、裸足で歩いてやろうと思ったけど、そうなるともう全てがどうでもよくなって、着てる物全部びりびり脱いで、持ってる物全部行儀良く並ぶマンションの窓に投げつけて、大声で歌いながら歩いてしまうかもしれない恐怖で涙が出てきたので、「マメが潰れる音を聞こうよハニー」よろしく、静かに静かに歩きました。

そういえば、歴史のことを考えると、地面にはもの凄い量の血が染み込んでいて、汚れていない地面なんてなくて、今住んでいる家の下にも野武士や農民、狩人の血が染み込んでいるのだということを考えてしまい、そうなるとどうしても重力が憎らしくなるのが嫌だなと思って、電柱のてっぺんから飛び立つカラスが羨ましくて仕方なかった時期がありました。

決して同じではない空の下、私に「死ねばいいのに」と思わせた彼は重圧に逆らうファルセットでギターと歌い、彼に「使い捨てだな」と思わせた私は引力に任せて走るペンを追いかけています。