『ニシムクサムライ、ヒガシムクアタシ。』 no.1

土曜の深夜2時、バイトが終わってから、家に戻って何気なくお風呂に入ってから、家族が寝てしまってから、あたしは誰にも気づかれないようにそっと家を出た。

うちには三台の車がめちゃくちゃに停めてある。あたしが使える車を出すには手間がかかって、一度父親のビッグホーンをどかさないと出られなかった。ビッグホーンはうるさい。

やっと車を出して、家から200メートルほど離れた時には、何とも言えない達成感。解放感。開放感。ヤッター!って感じ。

一人。一人きりなんだ。そう思うとドキドキした。


それから1キロほど行ったところで、免許証を忘れてきたことに気づいた。ガッデム!
アウトローガール的には必要ないけれど、理性が警察官との会話をイメージしてみる。

「はい、検問中です。免許証見せて」
「はい、…あ、あれ?忘れてきたみたいです」
「じゃあここに住所と生年月日書いて。…んー君福岡からみたいだけどずっと免許証忘れたまま来たの?しかも一人か。困ったね、このままじゃ帰れないよ。家の人に連絡して迎えに来てもらいなさい。」
「携帯電話持ってないんです」
「そんなの僕の使っていいから」
「両親には心配かけたくないんです」
「じゃあ友達か、そうじゃなかったら一旦車ここに置いて、電車で帰るしかないよ」

・・・やっぱり免許証は取りに戻ることにした。

これが後々大活躍することになるなんて、そのときのあたしには想像できるはずもなかった。 

to be continued...